特別な日…






今まで誰かと一緒にいたいなんて、思ったことがなかった。

俺にとって特別な日ではなかった。

事務所に行って沢山のプレゼントを見てから何の日か思い出すことはあっても、

それを嬉しいとも思わなかった…。

当日を誰かと過ごさなかったことを淋しいと思う気持ちもなかった。

モデルをやるようになってから、俄かに騒がれるようになった時も、

直接プレゼントを渡そうとする人なんて、そう多くは学校にもいなかった。

高1の誕生日までは………。

まだ1年生だった時、アイツは廊下で突然俺を呼び止めた。

「はい!これ。誕生日のプレゼント!!」

今までの他の子のように、「受け取って下さい」でもなく、「受け取ってくれますか?」でもない。

そんな言葉に俺は「いらない。」としか答えたことがなかった。

あの時もし、アイツにそう聞かれていたら、やっぱり俺は「いらない」と答えたのだろうか?

…いや…違うな。もうあの頃には、小さい頃の思い出の彼女とか、

そんなこと関係なく、アイツが気になって仕方なかったんだから。

俺の誕生日を知っていた驚きとそれを祝ってくれようとする気持ちに対する喜び。

初めて自分の誕生日が特別な日だと思ったんだ。


「誕生日……俺の?

……おまえ、よく覚えてるな、ヒトの誕生日なんて。」

「自分の誕生日、忘れる方が珍しいよ……。

それより、開けてみて!」

有無を言わさなかったっけ…。

去年も俺は素直になれなかったな。

本当は自分の誕生日を意識した。

今年もアイツは俺にくれるだろうかと思ったっけ。

そして、そう考えてる自分に驚きもしたよな…。


初めてその日を誰か…イヤ、アイツとだけ一緒に過ごしたいと思った。

でも、やっぱり素直に告げる勇気などなくて、忘れてるふりなんかしたんだったな。

今年も俺はとぼけてしまうんだろうか?

アイツは誰とでも仲がいい。

他の男にもプレゼントを渡している。

だから、別にそれが特別な意味ではないと、期待してはいけないと分かっている。

でももし、俺が一緒にいて欲しいと伝えたとしたら……。




「葉月君!」

あ……。

「どうした?良玲。」

「誕生日おめでとう!

はい!これ、プレゼント!」

「あぁ、今日だったな、そう言えば……。

……なんだよ、ニヤニヤして……。」

また、俺は……こんな言い方しか出来ない…。

「“ニコニコ”って言ってよ……。

今日は葉月君が生まれた特別な日でしょ?」

「特別な日……か。

ヘンな奴だな、おまえ。」

どうしてそんなに嬉しそうなんだ??

「いいから、いいから、

開けてみてよ!」


ガサッ…


「これ……。」

やけに大きいとは思ったんだ。

だけど…これは……。

「去年、ネコ耳つき枕すごく喜んでくれたから、今年作ってみたの。」

「…………。」

ネコのぬいぐるみかと思った。

あぁ、お腹が枕なのか……。ってイヤ、そうじゃなくて…。

じっと見ている俺の様子に良玲の笑顔が曇った。

「ご、ごめん。気にいらなかった?」

「あ、いや……」


去年の枕…愛用してるんだぞ。

また枕…しかもでかいネコ…貰って、どうしろって………。

「あ、やっぱり別のにする!」

泣きそうな顔をして、返してと両手を差し出し、俺を見つめる。

いいよ。何でも……本当はお前がくれるものなら…。



「…なぁ、今から…俺の家、来いよ。」

「え?」

「明日休みだし、お祝い…してくれるだろ?」

ボッ!良玲の顔が真っ赤に染まった。

えっ?俺なんか変なこと…言った…か?

「…葉月君。それって、……深い意味ある??」

「は?」

何の事だ?

「あ、ごめん。勘違いだったみたい…。」

落ち着きのない視線を泳がし、良玲が更に赤くなっている。

あ……。


明日休みだから、家に来いって言ったか??俺???

いつもはスゴイにぶいくせに、俺が思ってもいなかった事を深読みしたのか?

クスッ

「あ、なんで笑うの??」

ぷぅ〜〜と頬を膨らませて、真っ赤な顔で睨んでいる。

可愛いな………。

もしかして、俺はもっと積極的になってもいい…のかもしれない。


「なぁ……。深い意味がある……って言ったら、…お前…どうする?」

俺は都合のいい勘違いをしてるだけじゃないか?

わざと意地悪を言ってみる。

「え?」

次の瞬間、もっと真っ赤になって、キッと俺を睨んで、ふっと視線を外す。

「ズルイ!知らない!!」

スタスタ俺を置いて歩き出す。

「あ、ちょっと待てって。…おい!」



今日は…本当に特別な日…だな。

まだ何も伝え合っていない…。

それでも、お前と心が通じたような気がした。

今日という日を、誰かと過ごす……。

何年ぶりだろう。

なぁ、…俺のこの気持ちを…お前に伝えても、

お前は俺の隣にいてくれる……。



そう信じていい…か……?







この枕、お前専用……だな。





Fin





中泉花野さまより、フリー作品を頂いてまいりましたv
ああああ、素敵v王子視点の誕生日のお話です。
主人公ちゃんの慌てぶりも、王子はこんなに愛しさ一杯で見てるのねーv
先に頂いたイラストとリンクしているところが、また二つをお互いに楽しめて萌え度も2倍です!
その素敵センスにクラクラしてしまいました。

素敵なSS、本当にどうも有り難うございました!
花野さんのサイトへは、サンクス!ページよりどうぞvv